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平成21年度 日本結晶成長学会賞受賞者紹介
第4回業績賞・第26回論文賞・第16回技術賞・第7回奨励賞 |
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第4回業績賞 |
[受賞者] |
平野 眞一(大学評価・学位授与機構) |
[受賞課題] |
「化学的考察に基づいた結晶合成法の研究」 |
[受賞理由] |
受賞者は、無機材料化学の分野において、分子レベルでの微構造を制御し、基礎科
学と材料科学の両 面から研究を進め、先駆的な多くの成果を挙げてきた。
1970年代半ばから広く無機結晶の水熱合成法について、装置開発から取組み、現在のリチウム電池材 料の構成結晶の基となっているアルカリマンガン酸塩結晶など、様々な化合物結晶の合成について雰囲 気制御などを取り入れた先駆的な研究を行い、その後の酸化物超伝導体の高品質結晶の合成にも応用 されている。さらに1980年代からの基
板結晶上での薄膜の配合結晶化の研究では、溶液中での分子構造 が組成制御した配向薄膜の低温合成の鍵であることを見出し、圧電性機能膜として注目されている、ニオ ブ酸リチウム結晶性配向膜の低温合成に初めて成功した。次いで、分子からの酸化物結晶粒子の生成で は、ナノ材料と言われる以前から、結晶性ナノ酸化物粒子―有機ハイブリッド材料の室温付近での合成に 成功した。
また受賞者は、人工結晶工学会の代表委員を長年務め、大学の基礎研究と企業の実用化研 究の架け橋になるとともに多くの研究者を育成した。そして会長として、日本結晶成長学会との統合を実現 し、我が国の「結晶成長学」の集約と次の発展の新体制構築に大きく貢献した。
以上のように、受賞者が、結晶成長学において先駆的業績を上げるとともに、日本結晶成長学会の発展 に顕著な業績を挙げたことは、日本結晶成長学会業績賞を受賞するに相応しいと判断した。
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第26回論文賞 |
[受賞者] |
佐崎 元(北海道大学低温科学研究所) |
[受賞課題] |
「高分解光学顕微技術の開発とこれを用いたタンパク質結晶成長機構の分子レベル での解明」 |
[受賞理由] |
受賞者は、タンパク質結晶表面での単分子ステップや個々の分子の挙動を直接観察
することが可能な 新たな光学顕微技術を開発し、これを用いて分子レベルでの結晶素過程を解明する一連の業績を挙げた。
まず、レーザー共焦点微分干渉顕微鏡を開発し、反射率が1%以下の透明なタンパク質―溶液界面に おいて、nmオーダー高さの単位ステップをその場光学観察することに初めて成功した。また本技術を用い て、タンパク質結晶中の転位をサブミクロン空間分解能で結晶の成長中に観察できることや、2次元核形 成に及ぼす不純物効果、ゲルが結晶品質を向上させる機構などを明らかにした。さらに、蛋白質結晶― 溶液の界面で個々のタンパク質分子を1分子観察することに世界で初めて成功し、固液界面に特有な拡 散挙動を明らかにした。
以上のように、受賞者の、タンパク質結晶の成長素過程の解明に大きく貢献するこれらの成果は結晶成 長学の基礎の発展に大きく寄与するとともに、この一連の研究で培われた実験的手段は、バイオ材料の 結晶成長学にも極めて大きく貢献するものである。またこれらの研究成果が、J.Cryst.Growthをはじめ、国
際的に著名な多くの専門誌に掲載されたので、日本結晶成長学会論文賞を受賞するに相応しいと判断した。
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第16回技術賞 |
[受賞者] |
吉川 彰1、柳田 健之1、鎌田 圭2、横田 有為1、荻野 拓3 (1東北大学多元物質科学研究所、2古河機械金属(株)、3東京大学大学院工学系 研究科) |
[受賞課題] |
「ガンマ線用シンチレータPr:LuAG単結晶の開発とその応用展開」 |
[受賞理由] |
受賞者らは、ガンマ線用シンチレータとして最適でかつ実用レベルの大口径・高品質Pr添加Lu3Al5O12 (Pr:LuAG)単結晶を開発するとともに、結晶の加工技術・デバイス技術まで開発することにより、乳癌用 陽電子断層撮影装置(PEM)の実用化を短期間で成功させた。
まずガンマ線用シンチレータとして、発光量・応答速度・エネルギー分解能がいずれも高いPr:LuAG単 結晶を、独自の物質設計指針と結晶成長手法を用いて開発した。そして実用化を目指し、CZ(引き上げ) 法で、固液界面形状制御により、4インチ化に成功し、また原料組成の最適化により、特性のロット間バ ラツキの低減を果たした。さらに、結晶の加工技術・高精度アレイ化技術も包含した撮像検出デバイスお よび実際の放射線画像の取得まで成し遂げることにより、短期間でPEMに搭載され、実用化に至った。 またこの結晶は、石油鉱物資源探査用や素粒子・宇宙物理用検出器などへの応用も期待されている。
以上のように、本技術開発は、システムを指向した結晶からデバイスの開発を垂直統合的に成し遂げ ることにより、短期間で実用化に至らせた、“学のシーズの実用化のモデルケース”といえるものである。 受賞者らは、結晶成長学の進展に大きく貢献しており、日本結晶成長学会技術賞を受賞するに相応し いと判断した。
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第7回奨励賞 |
[受賞者] |
手嶋 勝弥(信州大学工学部環境機能工学科) |
[受賞課題] |
「ネイチャーミメティック法による機能性結晶の創成」 |
[受賞理由] |
受賞者は、フラックス法やゲル法を中心としたネイチャーミメティック(自然模倣)手法を活用し、環境に 優しいものづくりをキーワードとして、機能性結晶を利用した環境問題解決に取り組んでいる。 まず、フラックス法では、天然に豊富に存在する食塩を溶媒に用い、形態やサイズを制御した光触媒 六チタン酸ナトリウムウイスカーを作製することに成功し、このウイスカーを太陽電池用光活性電極に応 用する研究を進めている。一方、ゲル法では繊維状のバイオ結晶が極めて複雑に絡み合った球晶を育 成することに成功した。 以上のように、若手研究者(現在37歳)である受賞者が、ネイチャーミメティック法を活用し、結晶の形 態を制御することで、その機能を充分に発揮することを目指し、またこれらの研究成果が、Crystal Gro -wth & Design等著名な学術誌に掲載されたことは、今後の結晶成長分野に新たな風を吹き込むこと が期待できるので、日本結晶成長学会奨励賞を受賞するに相応しいと判断した。
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[受賞者] |
山口 智広(立命館大学総合理工学研究機構) |
[受賞課題] |
「MBE法による新規InN成長手法の提案」 |
[受賞理由] |
受賞者は、窒化インジウム(InN)において、多様なその場観察技術を駆使し、現象のメカニズム解明 に取り組むことにより、分子線エピタキシー(MBE)の新たな高品質結晶成長手法であるDERI(Droplet Elimination by Radical Beam Irradiation)法を見い出した。 まずInNの結晶成長を困難にさせている“インジウムドロップレット”について、その形成・消失過程を 仔細に観察することにより、形成されたドロップレットを表面平坦性の良い窒化インジウム二次元膜に 変換形成させることに成功し、またその場観察技術を用い、制御することで、簡便かつ再現性よく高品 質膜が作製できることを実証した(DERI法)。また、その場観察により得られる知見は、これまで測定 することが困難であったラジカルセル性能をモニタリングできる一つの技術になることも見いだした。 以上のように、若手研究者(現在31歳)である受賞者が、多様な評価手段を駆使し、メカニズム解明 という基礎的取り組みの中から、ブレークスルーに繋がる新たな結晶成長手法を見いだし、またこれら
の研究成果が、Appl. Phys. Express等著名な学術誌に掲載されたことは、今後の結晶成長学の発展 に貢献できることが期待できるので、日本結晶成長学会奨励賞を受賞するに相応しいと判断した。
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[受賞者] |
Salvador Zepeda(北海道大学低温科学研究所) |
[受賞課題] |
「不凍タンパク質の氷/水界面吸着と氷結晶成長抑制機構の解明」 |
[受賞理由] |
受賞者は、原子間力顕微鏡や蛍光顕微鏡を駆使して、氷/水界面に吸着して、氷の結晶成長を抑制 することが知られている不凍タンパク質の氷結晶界面への吸着が氷の結晶素過程に及ぼす役割を実 験的に明らかにした。 まず、蛍光ラベルをつけた不凍タンパク質の水溶液中で氷結晶成長実験を行い、結晶成長に伴う氷/ 水界面、結晶内部、さらに水溶液中でタンパク質の濃度分布を共焦点蛍光顕微鏡により、その場観察 し、タンパク質の界面への吸着と結晶成長挙動との関係を初めて明らかにした。また原子間力顕微鏡 により不凍タンパク質分子の吸着力の測定にも成功している。 以上のように、若手研究者(現在36歳)である受賞者の、氷結晶成長抑制という不凍タンパク質の機 能発現の機構の解明に迫るこれらの成果は、生体高分子による結晶成長の制御というバイオミネラリ ゼーションをはじめとしたバイオ材料の結晶成長学にも極めて大きく貢献するものである。またCrystal Growth & Design等著名な学術誌に掲載されたことは、今後の結晶成長学の発展に寄与することが期 待できるので、日本結晶成長学会奨励賞を受賞するに相応しいと判断した。
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